エンドポイント(高齢者)から見るヘルスケア
vol.17 no.1(2014.2.17)より
高橋 啓(コアメンバー)
昨年,コアメンバー会議において,2014年のヘルスケアミーティングは高齢者をテーマにヘルスケアらしいミーティングを開催しようという話になりました.担当者として「ヘルスケアらしい高齢者とは?」ということを考え続け,高橋が達したメイン講師は,米山武義さん(静岡県開業)でした.米山さんをメイン講師に選出した理由はヘルスケア型診療にも理解があり,高齢期のペリオにも精通しているため,本テーマに関してヘルスケア歯科学会会員に有用な知識をもたらしてくれると考えたからです.米山さんのプロフィールを簡単に紹介すると,日本歯科大学歯周病学教室在籍時にスウェーデンのイエテボリ大学に留学されていました.80年代にアクセルソン教授をわが国に招いて,北欧型の予防歯科を紹介した立役者です.ご存知の通り「PMTC,PTC」を紹介し,「口腔ケア」という言葉を作られた歯科医師であり,高齢者歯科医療にも精通されています.
先日,米山さんと第一回の打ち合わせ会を行ってきました.参加メンバーは,米山さん,杉山精一さん,藤木省三さん,秋元秀俊さん,高橋の5人です.話は最初からとても盛り上がり,解散まで沈黙の時間はまったくありませんでした.その中で印象に残った言葉をいくつか紹介します.
●「エンドポイント(高齢期)から予防を見る」
という言葉がとても印象的でした.米山さんは,卒業直後に高齢者施設で施設入所高齢者の口腔内の悲惨な状況に立ちあったことが,その後のすべての出発点になったと言われました.アクセルソン教授の下で予防歯科に関するエビデンスを学び日本に帰ってこられた方ですが,「高齢期の口腔内から逆算してこの年代には何が必要か? と考えることが多くなりました」と語られていました.私は,ヘルスケア型診療というと子ども口腔内から将来の予防を考えることが多かったので,そんなポイントも目から鱗の話でした.当然,臨床記録の重要性は共通の話題でした.
●「問題は関わり方,関わり続けられるかどうかがポイントです」
日本ヘルスケア歯科学会の会員は診療所において臨床記録を残し,そこから得られる情報を日常のメインテナンスにフィードバックをしています.それを患者利益につなげていく診療です.常に誰もが「関わり方」(患者との関わり方,スタッフとの関わり方,いろんな関係者との関わり方等々)を意識していることと思います.ただ,「ずっと関わり続けよう」と本気で考えている人はどれだけいますか? 漠然と関わり続けようと思っていませんか? 「ずっと関わり続けるための行動している」という人はどれだけいるでしょうか? そんなことに一つの見本を示せたらと考えています.「高齢者だから,障害を持っているから,疾患があるからといって関わらないという理由にはならない」と言われていたのも非常に印象的でした.
●「高齢者まで診て予防を完結できる」
確かに! と唸ってしまいました.子どもから高齢者まで予防を完結する.完結するために何ができるか? 自分にとっても大きな命題となるような言葉でした.
●「スウェーデンにできて,日本にできないことはない」
米山さんは,スウェーデン留学時代に,「こんなに世界には日本製品があふれているのに,どうして歯科では日本発の情報が出てこないの?」と真顔で聞かれることがあったそうです.子どもの予防も高齢者の予防も日本でもできるはずと語られていました.そんな強い想いで今まで臨床に取り組んでこられたそうです.
●「在宅でのメインテナンスは,かかりつけ歯科医院によるメインテナンスの延長でしょう.バイオフィルムをしっかりと管理していくのが歯科の役割です」
私自身,在宅診療にも取り組んでいて,その難しさも感じています.しかし,いろんな壁にぶつかり在宅でのメインテナンスの継続性を大きく打ち出せないでいました.実践している話を聞くと「よし! 自分ももっと頑張ろう」という気持ちになりました.
最後に米山さんからのエールを紹介します.「日本ヘルスケア歯科学会会員の皆さんは,臨床記録を活用した質の高い臨床を展開されています.今回のヘルスケアミーティングがその飛躍の一助になれば幸いです」
この打ち合わせに参加した全メンバーは,とても熱い時間を共有しました.この心地よい情熱をみなさんに届けたいと強く思っています.11月に神戸市で開催されるヘルスケアミーティングを楽しみにしてください.