患者視点の診療所認証 あなたも,一歩踏み出してみませんか?!
vol.17 no.3(2014.7.18)
渡辺 勝(コアメンバー)
みなさんは歯科治療において,一番重要な項目は何と考えていらっしゃいますか? 根管治療? 咬合? 様々な考え方があるかと思いますが,私はメインテナンスこそが,歯科治療の経過を左右する一番重要な項目と考えています.どんなに一生懸命に治療をしたとしても,残念ながらすべてが良好な経過をたどるとは限りません.生活習慣病の側面が強い歯科疾患.生活習慣の改善も,長期的に関わることによって,得られることもあります.そもそもが,様々なう蝕治療を施した状態は,いわばツギハギ.元々の一枚板でできていた歯質に比べて,とても脆くなっており,健全だった歯質の頃に比較して悪くなりやすいのは言うまでもありません.歯周治療が施された後の組織も,健全な状態に比較して複雑な形態を呈することも多く,プロフェッショナルケアによるサポートが必要なことも多いです.また,様々なイベントが起こるライフサイクルにおいて,現時点でリスクが低くても,それが経年的に保たれる保証は,どこにもありません.様々な医療分野のなかで唯一,患者さんの一生涯において寄り添うことができる歯科医療.そのなかで重要な位置を占めるメインテナンスの価値は計り知れません.
そのメインテナンス中において,医療従事者側でどうしてもコントロールができないのが転居です.会員のみなさんも,今まで一度も患者さんの転居を経験していない方は珍しいのではないでしょうか.患者さんとの関係性が良好に築けていて,疾患・リスクのコントロールもうまくいっているように見えたときに発生する転居.このとき,みなさんは,どのようにしてメインテナンスの継続について考えていますか? もちろん,患者さんの状況が許されており,遠方にも関わらず定期的な通院を望まれる方もいらっしゃいます.でも,そんな方はごく稀.ほとんどの方は,物理的に継続的な通院は不可能です.また,数か月に一度の通院は可能だったとしても,急なトラブルには対応できません.
当院では,患者さんから転居の連絡を受けると,日本ヘルスケア歯科学会の名簿とにらめっこです.よく知っている知人が居れば,迷わず紹介させていただきます.もし,いなかった場合は,近くに認証を取得した医院がないか,探します.もちろん,全医院の環境がベストというわけではないでしょう.認証取得時と比較して,状況が変わっている医院もあるでしょう(当院も取得時とは環境は大きく変わっています).しかし認証を取得しているということは,ある一定の基準を満たしているということ.少なくとも,理念において共通認識は持っているはず.メインテナンスを目的として患者さんを紹介させていただくと,快く受け入れてくださいますし,私たちも安心して,紹介して送り出すことができます.
逆に紹介を受けたとき,認証を受けているような規格性のある資料をきちんと揃えており,歯科衛生士カルテもしっかりしていると,患者さんとのコミュニケーションもスムーズに導入がはかれます.もちろん,再度記録はとらせていただきますが,その説明もスムーズですし,患者さんも好意的です.リスク部位が患者さん・医療従事者双方で理解が得られているため,再発が起きても,適切な対処ができますし,お互いが納得したかたちで次の段階へ進むことができます.何よりも,生活環境の把握が最初からできていることはとても大きいです.口腔内の状態だけからは把握しきれない,家族環境・社会環境が,口腔内に影響を及ぼす要素はとても大きく,その情報が事前に共有できているとスムーズな診療を行うことができます.
このように,認証診療所を取得することは,医院側だけでなく患者さんにとってのメリットは計り知れないものがあります.もちろん,取得に当たり行う患者アンケートや,自身の診療体制の振り返りによるメリットも多大なものがありますが,何よりも患者さんの健康を守り育てるために大きな飛躍ができます.
認証取得に向け,みなさん一歩踏み出してみませんか?