SDC COVID-19対応2
■新型コロナウイルスの特徴と歯科診療での問題点
Summary of ADA Guidance during the COVID-19 crisis(2020年4月1日版)には新型コロナウイルスの特徴として下記の7つの事項が列挙されている。
1) 今までのウイルスよりも「粘着性(Stickier)」が高く感染が容易である。
2) 60歳以上の人および基礎疾患をもつ人に深刻な症状を引き起こす。
3) 空気感染(Airborne route)の可能性がある。つまり、空気中の飛沫によって他の人に感染を引き起こす可能性がある。
4) 高速および低速のハンドピース、超音波スケーラー、エアーと水シリンジ、咳、口腔内X線撮影時にも感染する可能性がある。
5) 感染した人は症状を呈する前からウイルスを排出し唾液により感染させる可能性がある。
6) こどもは無症状で感染性があるかもしれない。
7) 歯科医院でよくみられる金属やプラスチックの表面で一定の期間(various periods of time)生存する。
新型コロナウイルスはこのような特徴があるため、歯科医院での診療に重大な影響があり、緊急的に歯科治療を行うには、これらのことを完全に理解して、感染予防用具(PPE)を準備し、診療環境の感染リスクを下げる体制を整えて治療を行う必要があるとされている。
■パンデミック後の当院の感染予防対策
4月第2週目(最初の診療日は7日)から、パンデミックに対応する必要があると考えて、患者さんとスタッフの安全の確保のために次のことを行った。
- メインテナンスの予約を6月以降に延期して診療ユニットを現在の5台から3台へ減らす。これにより、待合室の待機者を減らし、手の空いたスタッフが他のユニットのサブアシストにつける。
- SPT(1~2ヶ月ごとのメインテナンス)、歯周基本治療、歯科医師による治療は継続する。
- 感染した場合に重症化するリスクのあるスタッフの休職(1名が該当)。
- エアロゾル対策として、窓側ユニットのみ使用とし窓は常に開ける、治療中に口腔外バキュームと口腔外バキュームを常時使用する。
さらに、メインテナンス予約の延期で空いた時間を利用して、曖昧となっていた感染予防策について、特に唾液による接触感染予防策に重点をおいて検討した。具体的には、歯科医師治療時のアシスタントのグローブは、エアロゾル等で汚染しているものとし、そのまま、引き出しの開閉、材料等を取ることを禁止とした。義歯洗浄、CR充填、印象など治療について汚染したグローブで触らないための手順の確認を行った。唾液やエアロゾルに汚染されている部分をレッドゾーン、汚染されていない部分をホワイトゾーンとし、接触できる部位の分別を決定した。
4月第3週(最初の診療日は14日)から、診療にあたるスタッフ(術者とアシスタント)全員が感染予防着、フェイスシールド、帽子の着用を開始した。医療用の感染予防着はすでに入手出来ない状態であり、一般作業用のガウンを着用し、基本的には1週間にひとり2枚支給とした。予防着等の着用にあたって、待合室、受付にその理由についての掲示を行い、患者さんが診療室に入った時の問診に加えて着用の理由を説明するようにした。
X線撮影について基本的に口腔内法は禁止としてパノラマ撮影のみ、口腔内写真撮影は、初診患者等は正面と上下の3枚、超音波スケーラーは使用禁止とした。受付には、飛沫対策としてビニールシートを天井から下げるように設置した。
感染予防着を着用した感染予防策について患者さんからは、「ここまでしてくれると安心だわ」、「今は大変だけど歯医者さんは当然よね」など予想以上の評価を得ている。なかには「先生、お似合いですよ」といった言葉もいただいている。パンデミックの状況では、患者さんの歯科受診に対する不安はかなり高いようで、以前より厳しい感染予防策は安心した受診につながるように感じている。また、予防着を装着する前の1週間は、スタッフがとても神経質になっており、診療に対して不安を感じている者も多かったが、予防着を着ることにより、頭部や肌の露出がなくなり、また、昼休みは予防着を脱ぐことで、リラックスできるため、診療に対するストレスは軽減できているようである。
図:SDCコロナ対応感染予防202004以降 その1 その2 を参照
■医院経営の視点から
4月第二週から来院患者の人数を減らしたため、当然、医院の診療収入は減少している。私の医院は、予防を基本とした診療体制のため、メインテナンスに来院する患者さんが多く、そのために歯科衛生士を一般的な歯科医院より多く雇用しているので影響は甚大である。
今回の新型コロナウイルス感染症に対する治療薬やワクチンがいつ頃になるか不明であること、パンデミックは第一波だけでなく、第二波、第三波もあるといわれ、その期間は数年に及ぶと予測されていることなどから、医院の受入人数制限の期間が長引くと、経営上の大きな問題となる。
健康に見える人にもウイルス保有者がいること、エアロゾルによる感染、唾液による感染があることから、パンデミックが終息しても、歯科診療を行う上では、以前からのスタンダードプリコーションに加えた感染予防策、新型コロナ対応スタンダードプリコーションが標準になると思われる。これが日本の一般開業歯科医院で、普通に実施されるための公的なサポートを整えていくことができなければ、住民とスタッフから信頼される歯科医療の提供が困難になると考えている。




