HCM2026_特集

What is health care treatment?

丸山和久×高橋 啓

小児期から始まる,人生100 年の歯科医療
―ヘルスケア診療室の小児歯科を,見直してみましょう

11 月22-23 日開催のヘルスケアミーティング2026 に向けて,メインテーマの「未来はここから ――小児歯科医と本気で考える小児期ヘルスケア診療」の座長・丸山和久さんと発表者の高橋 啓さんに,今回のテーマ「なぜ小児か?」についてお話をうかがいました.

小児期は「人生100 年の入り口」

日本ヘルスケア歯科学会が大切にしてきたヘルスケア診療は,特定の年齢だけを対象とするものではありません.小児期から成人期,そして高齢期まで,人生全体を見据えて口腔の健康を守り育てていく医療です.その出発点となるのが小児期です.小児期は,人生100 年時代の入り口ともいえる重要な時期です.この時期にどのように関わるかによって,将来の口腔環境は大きく変わります.私たちはこれまで,小児期の診療において,う蝕の予防管理を中心に取り組んできました.メインテナンスを通してむし歯を防ぎ,健康な口腔環境を育てていくことは,ヘルスケア診療の大切な柱です.しかし今,あらためて問い直してみたいのです.小児期の診療は,本当にそれだけで十分なのでしょうか.

痛みがない問題は,見過ごされやすい

小児期の口腔には,痛みがなく,見た目にも大きな問題がないために,見過ごされてしまう課題があります.歯列や咬合の問題,口腔機能の課題などは,症状として強く現れないことが多く,「様子を見ましょう」という判断になりやすい領域です.もちろん,すべてに介入すればよいわけではありません.大切なのは「適切な時期に,適切な対応をすること」です.では,その適切な時期とはいつなのでしょうか.どこまで介入すべきなのでしょうか.そして,どこからは経過観察でよいのでしょうか.こうした判断は,日々の臨床のなかで多くの歯科医療従事者が迷いながら向きあっている問題でもあります.

経験豊富な医院こそ,今一度見直したい

ヘルスケア診療に長く取り組んできた診療所ほど,小児の診療にも多くの経験を積んでいることと思います.しかし医療は常に進歩しています.また臨床は,知らないうちに「慣れ」によってかたちが固定されていくこともあります.長く続けているからこそ,
● いつの間にか自己流になっている部分はないか
● 最新の知見とずれている部分はないか
● さらに良くできる部分はないか
こうした視点で一度立ち止まり,診療を見直すことには大きな意味があります.ブラッシュアップとは,これまでの実践を否定することではありません.むしろ,これまで積み重ねてきた診療をもう一段深め,より良い医療へと発展させていくことです.今回のヘルスケアミーティングが,そのきっかけになればと考えています.

「お手本にしやすい臨床」から学ぶ

ヘルスケアミーティングでは,小児歯科専門医の方々にご登壇いただきます.しかも今回の講師は,大学や専門施設のみで診療している先生だけではありません.ヘルスケア診療室のなかで日常的に診療を行っている小児歯科専門医を中心にお願いしました.これはとても重要な点です.どれほど優れた講演であっても,診療環境が大きく違えば,そのまま臨床に取り入れることは難しいものです.今回の講演では,
● 小児期に気をつける基本的なこと
● ヘルスケア診療と小児歯科の親和性
● ヘルスケア診療室で実践できる小児歯科での取り組み
など,日々の臨床に活かせる実践的な内容を学ぶことができます.きっと多くの方が「これなら自分たちの診療でも取り入れられる」と感じていただける内容になると思います.

明日からの診療を少し良くするために

ヘルスケアミーティングは,院長だけでなく,ぜひスタッフの皆さんにも一緒に聞いていただきたい内容です.小児診療はチーム医療です.実際の診療では,
● 子どもとの関わり
● 保護者への説明や関わり
● メインテナンスでの観察
その多くを歯科衛生士が担っています.院長とスタッフが同じ理解を持つことで,診療の質は確実に高まります.小児期をどう診るかは,その人の一生の口腔の健康に関わります.ヘルスケア診療は,「歯を治す医療」から「健康を守り育てる医療」へと歯科医療を進めていく取り組みでもあります.その出発点となる小児期の診療について,この機会にもう一度見直してみませんか.今回のミーティングが,皆さんの診療をさらに深める時間になることを願っています.


ニュースレターVol.29 no.2 (2026.4.24)より